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リーダーシップ論の本棚

リーダーシップ

日本

自衛隊 最前線の現場に学ぶ最強のリーダーシップ

自衛隊 最前線の現場に学ぶ最強のリーダーシップ

  • 作者:松村 五郎
  • 発売日: 2017/08/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

アメリカ海軍に学ぶ「最強のチーム」のつくり方: 一人ひとりの能力を100%高めるマネジメント術』と対比的に読むと面白い。 経済感覚や思考の柔軟性を重視する米海軍に対して、心理学的側面と基本手順の励行を重んじる陸自自衛隊には、旧陸軍の精神論が心理学に形を変えて生き残っているようにも見える。 しかし、よくよく読むと、米海軍の手法はアメリカ人の即物的で開放的な気質によく適しており、自衛隊の手法は日本人の内向的で几帳面な気質に適しているのだと思い至る。

ビジネスで使えそうな普遍的なとこだけざっと読了。米海軍士官候補生教本と比すると、簡潔なるもやや内容に乏しく、教条的すぎるきらいがある。また、そのまま普遍的に使える内容に乏しく、具体的な軍事的場面を想定しすぎているように感ずる。

明治維新を生きた豪傑、西郷隆盛の遺訓。「己れを足れりとせざるより、下々の言も聴き入るるもの也」など、現代でも通用するリーダシップの名言の宝庫。しかし、今日ではほとんど使われない古語も数多く登場する難解な一冊でもある。 なお、「手抄言志録及遺文」以降はつまらなそうなので読み飛ばした。

米国

リーダーシップを多角的に分析した稀有な本。たかだか254ページで、およそすべての観点からリーダーのあるべき姿を分析している。その内容は、組織メンバーの分析から、リーダー自身の節制、酒癖、食堂のマナーにまで至る。その心は、海軍とは生き方そのものであり、リーダーとは全人格的で一生の修練を要する難事、ということに尽きる。

ペルシャ湾洋上での著者の体験談は、太平洋のはるか彼方に住む私に、不思議な説得力をもたらした。縦割組織、硬直的制度、年功序列非正規労働者増加など、米海軍と日本企業には実に共通点が多い。 また、名言の宝庫でもある。 ・すばらしいアイデアを採り入れるのに要する時間は、たったの五分だ ・どんな小さな提案であっても、いいアイデアは惜しみなくほめ、その提案者の"実績"として高く評価した ・本当に重要なもの以外、規則は"厳然たる法"としてではなく、"指針"として扱われるべきである ・きみたち全員が艦長だ!

前作の「最強のチーム」とは打って変わって、本書では他業種の優れたリーダーの経験談を織り交ぜながら、理想のリーダー像を語る。 筆者の所属していた米国海軍は、タテ割で閉鎖的な組織、硬直的な雇用制度、年功序列な賃金制度など、実は日本の大企業と共通項の多い組織だ。だからこそ、本書には日本の大企業にも受け入れやすい方法が溢れている。 筆者は言う、「数字を達成するために働くというのはわかる。しかし、それがなんだというのだ?」と。経営手法やガバナンスのタテマエばかりが先行した、平成最後の年に読みたい一冊。

米国潜水艦隊で最底辺から頂点に上り詰めたサクセスストーリー。キーワードは当事者意識と習慣化。各自に自分のタスクを管理させ、期日を自分自身でコミットさせることで当事者意識を醸成。口頭報告や作業前の確認を定型化して習慣化させ、ミスを削減。言うは易し行うは難し。

第二次大戦、朝鮮、ベトナムの各戦争に従軍し、冷戦期を生きた頑固一徹な陸軍将校による統帥の極意。その真髄は「厳しいがフェア、そして温かい人間」であることである。現代に生きる身からすると厳しすぎて少々時代遅れな感もあるが、死線を戦い抜いた戦士としての含蓄がある。部下から死にたくないと泣きつかれた時に、瞬時に適切な判断できるか?私にはムリだが、この本には1つの答えがある。

フォロワーシップ

フォロワーシップとは、リーダーを支える部下の姿勢のこと。リーダーシップの逆の概念。特に日本によくあるボトムアップ型の組織では有用。本の内容としては結構殺伐としていて、辞職、虐待や内部告発にも触れている。ある意味非常に実務的。リーダーにとっては耳の痛い話もちらほら出てくる。どっちかというとリーダーに読ませたい本かな。

帝王学

日本

付録についてる誡太子書の翻字だけ読了。誡太子書は、14世紀初頭に花園上皇が近く即位する甥に宛てて書いた訓戒。即位ニュースで話題になってたので、仕事の参考になるかと思って読んでみた。その内容はおおむね儒教的な帝王学を語っており、万民の参考にはならない。ただ、民の苦しみを知らずにエスカレータ式に上に立つことに対して「恥ずかしくないのか?」と強烈に批判する様は、IT土木の一員としては身につまされるものがある。

中国

貞観政要 (現代人の古典シリーズ 19)

貞観政要 (現代人の古典シリーズ 19)

  • 作者:呉 兢
  • 発売日: 1996/08/31
  • メディア: 単行本

古来より帝王学の教科書とされた一冊。唐の皇帝、太宗、李世民の言行録。貞観元年(627年)、李世民は中国をほとんどを版図に置く巨大帝国、唐の第二代皇帝に即位した。李世民は、よく臣下の諌言を聞き、人民を思い、倹約に努めて、驕ることがなかった。本書は、後に貞観の治と称えられる治世の秘訣をまとめた書である。

イタリア

君主論 (岩波文庫)

君主論 (岩波文庫)

TBD

よいこの君主論 (ちくま文庫)

よいこの君主論 (ちくま文庫)

TBD

具体的な事例

製造業

トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして

トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして

OODAループの本で紹介されてたので読んでみた。おおむね公知のトヨタ生産方式に関する話。ただし、トヨタ生産方式の源流がフォード一世にあるというのはとても面白い。アメリカから出て、日本で育ち、またアメリカに帰ってきたということかな。

零戦 その誕生と栄光の記録 (角川文庫)

零戦 その誕生と栄光の記録 (角川文庫)

堀越二郎の言には、技術者の全ての思いが詰まってる。 堀越は、実現困難な要求や死亡事故に直面しながら、既存設計の全面的見直しと革新的技術の導入によって、世界最高の航空機、零戦を作り上げていく。堀越は、その過程を回想しながら、自らの技術者としての考えを端的に述べる。それは、現代でも十分通用する普遍的価値を有していた。

追記

付箋をつけたところだけ読み返した。読むたびに新しい発見があり、また励まされる。技術者としてわきまえるべき心構えの全てがこの本の中にあるように感じる。堀越の「困難を避けて通らなかったことは、のちのことを考えると正しい判断だった」との言は、全く心に突き刺さる。

ビジネス

まんがでわかる 頭に来てもアホとは戦うな!

まんがでわかる 頭に来てもアホとは戦うな!

アホと戦わないためにどうすれば良いか?そんな軽い気持ちで読んだ人は、自分自身が実はアホだったということに気づくだろう。本書は、そんな無知の知にも気づかせてくれる。

戦略

日本

8章以降を再読。メモを取りつつ読み返し。失敗の本質と比べると単純明快とは言い難く、筆者達もまえがきで明快さに欠く旨を歯切れ悪く言及している。もっとも戦略という複雑怪奇な概念に本質があるのであれば、これ以上に整理しようもない気がする。

戦争とゲーム理論の戦略思考

戦争とゲーム理論の戦略思考

TBD

米国

OODA LOOP(ウーダループ)

OODA LOOP(ウーダループ)

OODAループはボイド元海軍大佐が空戦経験を昇華して提唱した、米軍ドクトリンの根幹をなす戦略だ。OODAループをPDCAサイクルの亜種のように軽く見て本書を開いた者は、おそらく痛い目を見るだろう。OODAループは単なる方法論ではなく、組織文化と一体化して自ら改善していく戦略にほかならない。そこにはPDCAサイクルで否定された暗黙知や属人化が闊歩していた。訳者が述べているようにPDCAでは対応しきれないAI時代に読みたい一冊。

中国

新訂 孫子 (岩波文庫)

新訂 孫子 (岩波文庫)

  • 発売日: 2000/04/14
  • メディア: 文庫

戦わずして勝つ 兵は拙速を尊ぶ 言葉少なでぶっきらぼう 勝つための方法。変わっていない。 マネジメントに通じる。

戦術

日本

陸自の元陸将補が戦術の本質を洞察した本。市販の軍事学の本にしては珍しく、フルカラーで図が豊富。簡潔で質実剛健な筆者の文体も相まって、シンプルでわかりやすい。 一方で、福島原発事故非戦闘地域問題などの実例を取り上げつつ、筆者の鋭い指摘が刺さる作風。実に痛快だ。

元陸将補の自衛官幹部OBによる戦術学の入門書であり、防衛省自衛隊への痛烈な評論でもある。古今東西の数十冊の文献と自らの経験に基づき、戦術学の基礎と持論を展開する。とりわけ、世界最強の米国陸軍の最新のドクトリンを紹介している箇所は必見である。

五輪書 (講談社学術文庫)

五輪書 (講談社学術文庫)

OODAループの本で紹介されてたので再読。「ある所をしりてなき所をしる、是則ち空也。」というのが宮本武蔵の思想の本質なんだろう。ドイツ人の職人気質にも通ずるところがある。

本書には、ビジネスにもつながる多くの勝敗の原則が示されている。「能力の根源は人格である。学識は能力の一要素にすぎない。(戦史教程)」、「戦争においては、作戦の開始から、すべて不確実なものである。ただ将帥の意志と実行力だけが確実なものとして例外に属する。(大モルトケ)」、「偉い奴には大なり小なり癖があるものである。その癖を知って、これを活用することが、指導者たるものの器というものだ。(山下奉文)」、「天は英雄の偸安を許さず」、「戦略の失敗を戦術では補えないが、逆に戦術の失敗は戦略で補える」

TBD

TBD

失敗学

職務における具体的な場面を想定しつつ、二章以降を再読。OODAループ、アジャイル開発宣言やGoogle流仕事術と比すると、巨大組織の運営方法に主眼が置かれていた。エラくならないとなかなか使う場面がない気がする。

事例

日本

TBD

学問のすゝめ (岩波文庫)

学問のすゝめ (岩波文庫)

TBD

米国

再読。 ロケット研究者のフォン・ブラウンは、第二次大戦中は独軍で、戦後はNASAでロケットの研究を主導した。彼は、マーシャル宇宙飛行センターの初代長官としてアポロ計画のサターンVロケットの開発を率いたリーダーである。開発当初の彼のリーダーシップは、独軍士官を手本とした典型的なOODAループのようであった。その後、組織の急拡大とともにOODAループ的体制の中に官僚的、システム工学的な管理手法を導入していくこととなる・・・。 あらためて読み返すと、OODAループと組織規模について考えさせられた。

ロシア

ロシア宇宙開発史: 気球からヴォストークまで

ロシア宇宙開発史: 気球からヴォストークまで

近年打ち上げ失敗の相次ぐロシアのロケット。その源流がこの本の中にある。 ロシアのソユーズロケットは、横にしても壊れない頑健さと打上成功率97%の信頼性を誇る。1950年代にソ連によって開発されたこのロケットは、その源流を第八八研究所第一専門設計局の開発したR-7ロケットに遡ることができる。 R-7ロケットに至る道は、技術者たちの夢とソ連の政治家の血の粛清に彩られた茨の道であった・・・。

追記 再読。 違うロケットエンジンの燃料を研究するグループ同士でいがみ合ったり、共産党員に密告されてシベリヤ送りになったり、シベリヤで壊血病にかかって歯が10本以上抜けたり・・・。この種の技術史にはふさわしくないキナ臭い話題ばかりだ。 そんな中で面白いと思ったのは、宇宙開発初期の頃に官民のロケット研究所をトップダウン的に統合したこと。国民全てが共産党の指導下にあるが故に、赤軍の元帥の肝いりで官民統合も成し得た。もっとも、統合後に政治的対立が起きたことは言うまでもないが。

思考法

数理議論学

数理議論学

数理議論学は、数理論理学とhas-a関係にあり、本書は数理論理学の基礎知識を前提とする。数理議論学の専門書は日本では他に類がない。 「議論研究に魅せられて,はまってしまった」という著者の言葉通り、楽しげに議論研究が描き出される。流れるような定理と定義の展開は清々しくわかりやすく、散りばめられた豊富な例は数理議論学という捉えどころのない学問に肉質な実体を与える。比較的読みやすい一冊。